二年前の―――事件だ。
「今はこのHPはほとんど閉鎖状態だ。
管理者パスを掛けてある。
過去のスレッドを閲覧するのもおろか、BBSでなんかの書き込みも全部外部からは見られない。
管理者パスを知っているのは俺と―――
…アツだけ……」
「あんたの彼女?」意地悪っぽく言ってやると
「だから彼女じゃないって。
俺は鬼頭さんと付き合ってるし?」
「それは形だけでしょ」
久米の頭を軽くはたくと、久米は苦笑いであたしを見上げてくる。
「いつか…
いつか鬼頭さんが俺を見てくれれば―――二人で行動したら距離が近づくかと
思ってるよ」
久米はまっすぐにあたしの瞳を覗き込もうとする。
またあの視線―――
「あたしの好きな人は最初から最後まで水月ただ一人」
そう言いたかったけれど、
またも強い視線で見られて、あたしは金縛りにあったように微動だにできなかった。
その視線から逃れるように顔を逸らすと、
久米もそれ以上何も言わずに、パスワードを入力する画面で、手馴れた様子で数字や英字のパスを打ち込んでいる。
「管理者パスって…あんたがこのHPの管理者」
「そうだよ。
俺がパソコンをねだったのはこのHPを立ち上げるため。
ケータイじゃ限度があるしね」
「何でHPを作ったの。だって犯人が掴まって事件は解決してるはずでしょ。
今更何を語るって言うんだよ」
「掴まった犯人が
犯行を犯した人間とは別人だと言えば―――?」
は―――……?



