びっくりし過ぎてその場で硬直していると、


結ちゃんの顔はそっと離れていった。


だけど暗がりの中でも分かるほど彼女は頬を赤くして口元を覆っている。


「ご…!ごめんなさい!あたし…」


「…あ、いや…」


僕はキスされた頬をそっと撫でて目をまばたいていると


「ごめんなさい!」


またも結ちゃんは勢い込んで、ロックを掛けていなかったドアを乱暴に開けて飛び出していった。


「え!ちょっとっ!!」


慌てて追いかけようとするも、彼女は急ぎ足で家の中へと消えていく。





―――…一体…何が―――……




そう考えたのは数秒。


いや!マズいだろ!!


僕は一人であたふた。




でも




何がマズいんだろう。


僕は雅と別れているし、結ちゃんは僕の直接的な生徒ではない。


しかも唇と唇ではなく頬だし。





でも




「やっぱり良くない……マズいって……」



僕は深いため息と共に独り言を呟いて、シートに頭を預けると


乏しい街灯の光を受けて、僕の袖ら辺で何かが光った。


それはまるできれいな魚のうろこみたいな、薄い…





「コンタクト…」





やっぱり


「これはマズい」


僕は結ちゃんが落として行ったコンタクトを掲げて、再び吐息をつき眉を寄せた。


そのかざしたコンタクトは街灯の光りを受け、キラキラ…


淡い光を放っていた。