「でもさ…このシールが何で気になるの?このシール何かあるの?」
結ちゃんがちょっと不思議そうに目を上げる。
「それは―――…」僕も顔を上げると、
二人で夢中になってケータイを覗き込んでいたからだろうか、互いの顔が、
驚くほど近くにあったことに気付いて、慌てて顔を逸らそうとした。
そのふしに結ちゃんが片方の目を押さえて
「あっ!」と小さく呟いた。
「どうした?」僕が聞くと、
「コンタクト…外れて…どこかに落ちちゃった…」
結ちゃんの言葉に
「ぇえ!ちょっ、ちょっと待って!灯りっ。
いや、下手に動いたらマズイか」
そう言えばさっきも乾燥してるから外れそうだと言うことを喋ってた。
「ハードじゃないから大丈夫。割れることはないけど……でも無いと困るし…」
「そ、そうだよね。じゃぁ灯りつけよう」
そう言ってルームランプに手を伸ばしかけたとき、その拍子にまたも結ちゃんの顔に近づいてしまった。
ちょっとでも動けば、彼女の長い睫がかすめるぐらい―――それぐらい近く。
女の子特有の甘くて優しい香りが鼻腔をくすぐり、僕がゆっくりした動作で再び顔を逸らそうとしたが、
それよりも早く結ちゃんの顔が近づいてきて、
彼女の長い睫の先が僕の目尻を掠めたと思ったとき
結ちゃんの唇が僕の頬を撫でた。
へ―――………