HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~





メニュー表を眺めながら結ちゃんが横の髪を耳に掛ける。


今日はゴールドの土台に黒い石がついたぶらさがるタイプのピアスだ。


髪が短いとこうゆう大振りのピアスが映えるな。


「そう言えばさ…あのピアス…真珠の…見つかった?」


こないだ、今日と同じように結ちゃんとファミレスでお茶をしたとき、結ちゃんは妹の森本にパールのピアスを無くされた、って怒っていた。


「ううん、見つかんない」


と結ちゃんが力なく言って、メニュー表を閉じる。


「もう見つかんないよ。諦める」


「そんなに簡単に諦められる?」


僕がもう一度聞くと、


「諦めるしかないじゃん」


そう言われたら、これ以上何も言えない。


僕は俯くと、


「あ、ごめんなさい!八つ当たりみたいなこと」


結ちゃんは慌てて顔を上げて、


「無くなったら新しいのを買おうかな、って。早々諦めれるものでもないけど、


“恋”と同じって言うかさ」


「恋?」


「そ。失恋したら新しい恋を見つけようとするでしょ。


それと同じ。


いつまでもくよくよしてたら前に進めないから」


結ちゃんの言葉に僕は微笑んだ。




同時にそんな風に進める彼女が羨ましかった。




僕と結ちゃんでは失恋したパターンは違うけれど、僕はまだ新しい恋をしようと思えない。




足掻こうとしている。






雅を手放したくない






そう思っている。