久米がちょっと息を呑む気配があって、だけど次の瞬間無理やりと言った感じに笑う。


「鬼頭さんなら似合いそうだ。育ててるイメージはないけど」


「そ?」


「うん、男からたくさん花束は貰いそうだけどね」


「腐らせて終わり?ってイメージなら違うよ。


あたし、花束なんて貰ったことない」


ポケットに手を突っ込んで無愛想に言うと、久米は何が面白いのか声をあげて笑った。


「神代先生からもらったことないの?いかにもしそうじゃん?」


「そゆうのは保健医の方が得意だよ。


水月は……神代先生はケーキ買ってくれる」


「へぇ林先生が……意外だな」


またも久米は笑って鍵を鍵穴に差し込む。


カチリ


音を立てて鍵が開き、


「林先生こそ似合わないよね」とまたも久米が振り返る。


あたしはドアノブに手を掛けたままの久米の手に自分の手を重ねて、


「あんたもね。似非王子。


早く扉開けて、中に入れてよ。それともあたしを家に入れたくない何か不都合でもあるの?」


あたしが無表情に久米を睨み挙げると、久米は肩を竦めて


「そんなんじゃない。悪いけどケーキはないんだ。


ごめんね」


とそっけなく一言。あたしの手を軽く振り払って扉を手前に開けた。






「どうぞ」




促されて、あたしは玄関に脚を踏み入れた。


ここからは



一切の油断、ミスが許されない。