「さっき言ってた揮発性油や乾性油ですが…この学校にもあるんですか?」
僕が聞くと武田先生はちょっと目をぱちぱちさせて
「もちろん、ありますよ。
揮発性油としてはテレピン、ペトロールなど、乾性油としてはリンシードやポピーなど。その全部がうちには揃っているはずです」
と、答えてくれた。
だが
「どうしてそんなことを?」と聞かれて僕は慌てて手を振った。
「いえ!僕の生徒が…美術部に入りたいようなことを言ってて…でも道具が揃ってないようなので…」
とってつけたような言い訳にも、武田先生は深く突っ込まず
「ああ、そうゆうことですか。
大丈夫。道具がなくても初心者は全部貸し出しますよ。
気負わなくても気軽に来てください、とお伝えください」
とにこにこ微笑んでくれた。
武田先生は僕のいい訳をすっかり信じてくれたようだ。
「ありがとうございます」
僕はそれだけ述べて慌てて自分の席へ戻った。
ふぅ、危ない危ない。
これ以上突っ込まれたら言い訳できないし。
僕はもらったチケットを数学の教科書に挟んで、次の授業で指導する内容のおさらいをすることにした。
でも頭の中では、さっき見た…あの、狂ったような薔薇のシールの手紙のことでいっぱいだ。
おさらいどころじゃない。
あれは―――どうしてあの場にあったのだろう。



