HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




時間は刻一刻と迫っている。


タイムリミットまであと五分を切った。


焦りだけが募り、僕の額を嫌な汗が流れる。


ここで何も聞き出せないと、楠はたぶんもう―――この事件が終わるまで僕に何かを語ることはしないだろう。


僕は吐息を吐いて肩の力を抜いた。


「…君の意図が分からないな…


ここで黙るのなら、何故僕にUSBを送りつけてきた。


久米は犯人じゃない、と言い切ったからには僕が何か聞いてくるとは思わなかったのか?」



苛立ちで声が尖った。


でも楠は気にした様子もなく


「思いましたよ?」


今まで黙り込んでいた楠が少しだけ諦めの口調で小さく呟いた。


僕はその言葉に耳を傾けた。


「ただ、あたしだってこんな風になるとは予想しなかった。


まさか直接的に雅が仕掛けるなんて―――



ストーカー犯と接触するなんて自殺行為よ」



僕はゆっくりと顔を上げた。


表情が引きつるのが分かったが、一方で顔の筋肉が麻痺したように表情が変な風に固まった。



「…君は反対しなかったのか…?」


何とか答えて、でもそれが想像以上に上ずってしまって僕は口を噤んだ。


「もちろん、しましたよ。



でも雅の目的は犯人と接触するだけじゃなかった。


邪魔者の久米くん―――


そして右門 篤史を排除すること。




そして




あたしと久米くんの繋がりを確信するために




罠を仕掛けてきた。





実に効率的で、大胆な作戦だった―――




あと一歩だったのにね」