楠は大きな目をまばたいて、口元を引き締めた。
僕の目から何かを探るように、まっすぐに目を見つめてまばたきを繰り返す。
翼のような睫が上下して、楠が目を閉じるたびに
彼女の瞳の水晶体に自分の姿が映し出された。
やがて楠は口元にうっすら笑みを浮かべた。
瞳に映し出された僕の表情が困惑の色を浮かべる。
何を答えるのか身構えていたけれど、楠は淡い笑みを湛えた口元を再び引き締めて
僕をまっすぐに見つめたままゆっくりと腕と足を組む。
黙秘を―――
するつもりなのか。
休み時間は10分。
たったの10分だ。楠はその10分を沈黙と言う形で終わらせようとしている。
僕は焦った。
まさかこんな態度に出られるとは思わなかったから。
一筋縄じゃいかない、とはこの言葉を言うのだろうか―――
「答えてくれ、楠。雅のこれからが掛かっている」
僕が必死になって言うも、楠は表情一つ動かすことなく押し黙ったまま。
いつも表情が読みにくく無口な雅とは違って、人懐っこくて明るく、砂糖菓子のような笑顔が甘くてふわふわしている感じかと思いきや、
これが楠の本当の姿だ―――
この真の姿を僕は以前にも目の当たりにしたって言うのに、忘れていたのは僕だ。
その仮面の下で何を考えているのか。
ある意味、雅よりも手ごわいかもしれない。



