歴史は繰り返される。




その言葉通りなら―――


久米が美術バカであるのなら―――……


またこいつを傷つけるのだろうか。


でも分かっているのなら、それを食い止めなきゃならない。


「……」


あたしがポケットに手を突っ込んで押し黙っていると


「君が前と同じ手を使ってくるとは想定外だったな」


と久米もポケットに手を入れて軽く笑う。


「敵を知るには懐に飛び込むのが一番だってことだよ」


あたしはそっけなく言って久米を睨み上げた。


「敵、ねぇ。


ま、前と違うことは俺が君の策略に気付いているってことかな。





いいよ。おいでよ。




ただし、君一人でだ」






念押しされてあたしは黙り込んだ。





「どうしたの?一人で来るのが怖い?」


久米が意地悪そうに笑う。挑発されてるのは分かった。


あたしは目を細めて口の端でちょっと笑った。





「誰が。



あたしには今誰もいない。頼れる人も一緒に闘ってくれる人も



あたし自身が全部遠ざけた。




でも一人でも闘う。




生きるから死ぬか。それが問題なら




あたしは生きるために闘い抜いてみせる」





これから男の家に行くって言うのにあたしたちは全然ロマンチックじゃないムードの中、お互いがお互い探りあうように対峙していた。


仕掛けるなら―――久米の家しかない。


あたしはそんなことを思い浮かべていたけれど、久米の方はそれにどうやって対抗するのか考えているようで、





あたしたちは無表情で見詰め合った。