風呂あがりだというのに、彼女の体からはヒプノティックパプアゾンがほのかに香ってきた。


きっと衣服にしみこんでいるのだろう。


甘い香りを身近に感じながら、


僕は彼女に口付けした。


ドーナツの甘い香りが口いっぱいに広がり、変わりに雅の口の中はコーヒーの香りで満たされているだろう。




「水月―――大好きだよ。



だから今日はいっぱい



抱っこして?」




赤いリボンが床に滑り落ちると同時に、僕は彼女をソファに横たえていた。


僕の手首にかかった赤いリボンの先は彼女の心臓あたりに落ちていて、


それがまるで僕たちを繋ぐ赤い糸のように思えた。





だけどそれは未来を繋ぐものなんかじゃなく―――



運命を引き裂く



妖しくも美しい色だったことに






そのときの僕は気付かなかった。