「何か……色々ワケありっぽいね…」
岩田さんが探るように目を上げる。
まぁワケありっちゃワケありだな。
「ごめん。そのワケってのは今話せないんだ。複雑だから…
ついでに言うと乃亜と梶と仲違いしてるのもそれが絡んでる」
「うーん……まぁ……じゃぁ今は聞かないでおく。
気にしない―――っちゃ嘘になるけど、フリだったら……
ってか別に…まぁショックではあったけど、鬼頭さんならいいかな―――
って…」
岩田さんは考えるように首を捻って、やがて「へへっ」と舌を出して笑う。
「変なの。
まぁ久米くんはあたしにとってアイドルみたいなもんだし、鬼頭さん相手じゃ適わないし、
ってか正直に打ち明けてくれて、そっちの方が嬉しかったって言うか―――
それが堤内だったら何か腹立つケド」
岩田さん―――……
「先生が好きなら、あたしそれとなくヨリが戻るよう協力しよっか?」
どこまでも親切で優しい岩田さん。
「いや!さすがにそれはいいよ!!大丈夫、そのときが来たら、先生ともちゃんと話し合うから―――」
「……そっか…何かあったら…別になくてもいいけど、何でも相談して?聞くことしかできないだろうけど」
岩田さんは恥ずかしそうに笑って、わざと明るく言う。
「岩田さん、ごめんね―――
ありがとう」
「やっだぁ!ごめんね、なんて言われる筋合いないよ。だってうちら
友達でしょ?」
岩田さんは益々恥ずかしそうに顔を赤くして顔を逸らす。
友達―――……
あたしと岩田さんが―――
友達
「ありがとう」
乃亜以外の―――はじめての友達……
失ったものも多いけど、でも失うだけじゃない。
生きていたら、得るものも
あるんだ。
はじめてそれを知った。
それは今まであたしの頭の中の辞書には存在しなかったもの。
『友達』



