岩田さんは目を開いたまま、そのまま硬直していて嫌な沈黙が降りてきた。
「岩田さんが久米のこと好きだって知ってて、あたし……酷いことしてるって思ってるけど」
あたしの話しに岩田さんは辛そうに顔を俯かせて前髪をぐしゃりとかきあげた。
「……あ、いや…ちょっとびっくりして……」
そうだよね。
水月と別れたばかりなのに、久米と付き合うなんて。
相手が岩田さんの好きな人じゃなくても、あたし……サイテー女だ。
「噂なんてすぐ立つし、いずれ誰かから聞かされるより、あたしから伝えたほうがいいかなと思って…」
「……鬼頭さんて、久米くんのこと好きだったの?」
急に聞かれて今度はあたしの方が戸惑った。
「……ううん。好きじゃないけど(むしろ嫌いだけど)ちょっとわけがあって付き合ってるフリってのかな…」
言い訳にしか聞こえないだろうけど、これ以上のことは言えない。
「フリ?本気で付き合ってるわけじゃなくて?」
本当はフリだってしたくないけど。
今はあいつに聞きたいこと、聞かなきゃならないことがあるから。
あたしは無言で頷いた。
「あたしが好きな人は
神代先生。
ずっとずっと…この先も―――あの人しか
見たくない」



