あたしが拾う前に、その男子が腰を屈めてコーヒーの缶を拾う。
男子の視線が、あたしのつま先からゆっくりと上がっていって足、そして上半身へと上がっていき、
やがて拾う際に思い切り目が合った。
男子の一人は目をぱちぱちさせながらあたしを見上げてくる。何か言いたそうに口が僅かに開きかけたけど、何かを言うことはなかった。
「何?」
怪訝そうに眉を寄せると、
男子の一人は無言で顔を逸らし、
「行こうぜ」と他の男子に目配せしていた。
何だって言うんだよ。
普段なら何も思わないケド、今は生理だってのもあってイライラしてた。
ぐいとココアを飲んでいると、
「D組もお気の毒だな~。文化祭の優勝はA組に決まってンのに」
「無駄あがきしちゃってさ」
「バカみてぇ」
ギャハハと下品な笑い声をあげて、わざとあたしたちの方を見てきた。
ガキみたいな挑発にまたもイライラ。
でも―――…
A組の優勝が決まってるって、どうゆうこと?
単なる挑発って感じじゃなかった。
「ふざけんじゃないよ!A組に負けるかっての!卑怯な手使って勝ってあんたら嬉しいの?」
岩田さんが椅子をガタつかせて、立ち上がる。
「おお怖ぇ~D組の女は品ってもんがねぇよな」
「コネを使って何が悪いってんだよ。きれいごと言ってんじゃねぇよ」
「クラスが一団となって盛り上げる?何それ、安っぽい青春ドラマかよ。今頃流行らねぇっつの」
「社会に出ても力があるヤツが勝ち組なんだよ。お前らはせいぜいがんばれば~」
「たかが高校生の文化祭だろ?嬉しいもへったくれもあるかよ」
男子たちはケラケラ笑って遠ざかっていく。
卑怯な手、コネ―――……?
男子たちが視界から完全に消えてなくなると、岩田さんは怒りを滲ませたまま乱暴に椅子に座った。
あたしは再び岩田さんに向き直ると、
「どうゆうこと?」
彼女に問いかけた。



