そのことにちょっとほっとしながら、水月が立ち去ろうとすると、入れ違いに誰かが入ってきたみたいだ。


「失礼しまーす。あれ??先生?先生も鬼頭さんの様子見に?」


岩田さん?


明るい声が聞こえてきて、それでもちょっと探るように怪訝な様子だった。


「あ、ああ…どうしたのか気になってね。岩田も鬼頭の様子を見に来たのかい?」


「…はい。かなり具合悪そうだったし」


「そっか。今は寝てるみたいだよ」


水月は早口に言って、慌てて保健室を出て行ったようだ。


それでも岩田さんはそれ以上は深く突っ込まずに


「………林先生、鬼頭さん大丈夫ですか?」


心配そうに聞いて、


「お前あいつの友達?珍しいな。楠以外のツレってのは」と保健医が物珍しそうに答えている。


岩田さんが返答に困ったように沈黙したから、


「あたしが誰と仲良くしようが勝手でしょ」


タイミングを見計らって、あたしはカーテンを開けた。


「鬼頭さん、良かった。ちょっと顔色戻ったみたいだね。大丈夫?」


あたしがベッドから降りると、岩田さんが色んな意味でほっとしたように頬を緩める。


「うん、ありがと。わざわざ様子見にきてくれたんだ…」


「うん。何か倒れそうだったから心配で。どう?次の授業出れそう?」


「あー…うん、何とか。先生、ありがとうございました」と頭を下げて、出口に向かった。


「おう。大事にな」


保健医とは別に何もないけど、仲良さそうって色々勘違いされたら困るから、あたしは岩田さんを連れてそそくさと保健室をあとにした。