覚えのない男子生徒だった。雰囲気からして一年生だろうか。
体操着のハーフパンツからむき出しの膝が赤く染まっていた。結構な傷だと思う。
その男子生徒は横になったあたしを見ると、驚いたように目をぱちぱち。
だけどすぐにバツが悪そうな表情に変えると、一歩後退した。
「……すんません…帰ります」
シャっ
あたしは無言でカーテンを閉めて布団の中に潜り込んだ。
「帰るって、何しにきたんだよお前」
保健医は気にしていない様子で男子生徒を引き止めている。
「…いえ、お邪魔だったかな……って…」
「はぁ?」
保健医が声を低めたからか、
「い、いえ!すみません!!消毒お願いします!」
男子生徒が慌てて言った。
「なんなんだよお前は。はっきりしろよ」
と、単に手当てを求めてき男子生徒はタイミング悪く(?)保健医の不機嫌スイッチを押したようだ。
――
「いてっ!!痛いよ!先生っ!!もっと優しくしてくださいよ!」
と男子生徒が喚いて、
「これぐらいで弱音吐いてんじゃねぇ。胃潰瘍の痛みに比べりゃましだ」
とワケ分からない台詞を吐きながら、それでも手当てはちゃんとしているようだ。
てか比べる対象が胃潰瘍ってのもね…
呆れてその二人のやりとりを聞きながら、
あたしはいつの間にか眠りについていた。



