結局、


「………先生…ちょっと、寝かせて…」


保健室コースを選んだあたし。


「どうしたよ。お前顔真っ青」


薬品棚を整理していたのだろうか、保健医が振り返ってちょっと心配そうに顔色を曇らせた。


「大丈夫か?腹押さえて、拾い食いでもしたか?」


「バカじゃないの。あたしは拾い食いするほど飢えてません」


そっけなく言って、保健医の横をすり抜けた。それ以上は何か嫌味を言う余裕すらもなかった。


保健医の了承を得る前に、ベッドに掛かるカーテンを勝手に開けて横になる。


「サボリじゃないよ」


一応言うと、


「分かってるよ。貧血か?」


保健医は気にした様子がなさそうで再び薬品棚の整理をはじめた。


「…そんなもん。生理痛」


そっけなく言うと、


「そか。辛そうだな。薬飲むか?」とまたも気にした様子を見せずにあたしに背を向けたまま手を動かせている保健医。さすが、慣れていそうだ。


ま、今更生理痛の一つや二つで顔色を変えるやつじゃないか。


「薬嫌い」


「だよな。まぁ落ち着くまで寝てろ。疲れてるってのもあるんじゃね?」


保健医はそっけなく言って棚から小さなアンプル管を取り出すと、それを指で弾いた。


いつものけだるそうな表情ではない。いつになく真剣で、まるで睨むようにそのアンプルを見つめている。


ただ単に興味があった。保健医がそんな真剣な顔をして見つめているアンプルが。


黄色いパッケージのそのアンプルは、






「エピネリン?」






あたしは目だけを上げて保健医に問いかけた。