僕は、犯人が几帳面でないことを予想したが、確かにそれは当たっていると思う。
シールは向きがバラバラで列も乱れている。
でも
ぎっしり貼られたそのシールに、まるで執念じみた何かを感じて
恐ろしくなった。
何でこんなものが、ここに―――……?
思わずその紙を取り落としてしまうと、その紙は何の悪戯か、ひらりと森本の足元に舞い落ちた。
「先生?落ちましたよ…」
森本が親切で拾ってくれる。
「……あ、ああ。ありがとう」
礼を言ってその紙を受け取る間、僕は様々な考えをめぐらせていた。
この教室は文化祭の準備があるとは言え、いつも最終的に僕が施錠の確認をしている。
だから誰も居なくなった教室に忍び込むのは難しいだろう。
職員室のキーボックスから鍵を盗めば別だが、クラス教室のキーボックスは基本的に教師しか近づかない。生徒が鍵を持っていくとしたら、職員室の先生が不審がって何か聞くだろう。
生徒が居る間は、部外者だって立ち入れないはずだ―――
じゃ、誰が―――……
僕が慌てて教室を見渡すと、こちらに背を向けて懸命に問題に向かう生徒の後ろ姿が目に入った。
その無邪気とも言える彼らの背中を見渡し、僕はごくりと生唾を飲んだ。
何をバカなことを……
僕の生徒を僕自身が疑うとは……
自分の考えを打ち消したかったが、外部犯だと言う推理は無情にも打ち消される。
タイミングを見計らった頃に―――まるで僕に言い聞かせるように―――
“雅ハ、ボクノモノダ”
まるで言い聞かせるように。
執念じみた何かを感じて、僕はぎゅっとその紙を握り締めた。