それからはみんな大人しく問題に取り組んでいた。
僕は教室中をゆっくりと歩き、後ろのロッカーが並んでいる場所をうろうろ。
個別のロッカーの上には生徒たちが手作りをした、文化祭のカフェの飾りが無造作に置いてあった。
アップルパイにりんごケーキ、アップルティーなんかのイラストが小さな黒板に描かれた洒落たメニュー看板。
“出演者と記念撮影、一枚200円(カフェご利用のお客様限定)”と書かれたポスターや、劇で使用するのであろう役者の衣装。
リンゴの作り物まで置いてある。
生徒たちは少ない予算でもうまくやりくりをして、アイデアを出し合い、それなりに凝ったものを創り上げているようだ。
文化祭っぽくて微笑ましい。
去年、僕はクラス担任を受け持っていないから、実に二年ぶりだ。
クラス担任を受け持つのは大変なことだが、こうゆうイベントを生徒と一緒に楽しめるのは楽しい。
なんて感慨にふけっていると、いくつか作ったりんごの置物の間に、まるで挟まれるように一枚の紙が不自然に置いてあった。
何だ……?
さりげなくそれを手にとって―――目を開いた。
これは―――………
そう、僕が手にとったその紙には
僕の元に来たあの“脅迫文”と同じ薔薇のシールが隙間無くぎっしりと貼られていた。