「静かにしてよ!」


バンっ!


その浮ついてざわついた奇妙な空気を打ち破ったのは、


―――森本だった。



両手で机を叩き、勢いをつけて席を立ちあがる。


驚いたのは僕だけではなく、クラス中の生徒が目を丸めて森本を注目する。


「授業中でしょ!真面目に授業を受けてる人には迷惑よ」


森本が目を吊り上げてクラスを睨み回す。


だけど森本に賛同する者は誰一人としていなかった。


「…なんだよ、あいつKY」


「あー、何かテンション下がるワ」


「ノリ悪っ」


方々でひそひそと噂話が、悪口へと変わっていく。


森本は慣れているようで、気にした様子はないが―――


こうゆうのはよくない。


「…みんな」僕が何か言いかけると同時だった。


ガタンっ


またも大きな音がして、でも明らかにさっき森本が机を叩いた音とは大きさも種類も違った。


音のした方を振り向くと、


―――梶田が、ポケットに手を突っ込んで椅子に腰掛けたまま、机の脚を蹴り飛ばしていた。


不機嫌そうに眉を寄せて、






「ガタガタうっせぇな。



神代が別れたことってそんなに重要なんかよ。



誰だってあるだろうが、そういうこと。



話したくないこと、聞かれたくないことぐらいあるだろうが。




お前らこそKY」







唸るように低く言った言葉は、しんと鎮まり返った教室ではっきりとよくとおった。