「分かりました。もう一度生徒と話し合ってみます。情報をありがとうございます」
頭を下げて礼を述べると、
「ねぇタケル、コウサツってどう言う意味?」とシャーロット先生がまたも和田先生の袖を引っ張っている。
「考察…考えることですよ」
和田先生がまたもやんわりと笑顔で答える。
シャーロット先生は真面目なんだろうけど、和田先生とのやり取りが緊迫した雰囲気を和ませているように思えた。
「私、十年程日本に居るケレド、難しい日本語まだ分からないの」
シャーロット先生がちらりと舌を出して肩を竦める。
「タケルは親切だから色々教えてくれるのヨ」
「和田先生の説明分かりやすいでしょう?優しいし」
「ええ。とっても」
そう答えて和田先生に笑いかけるシャーロット先生の笑顔はとても穏やかだった。
あれ…もしかしてシャーロット先生は、和田先生のことを……??
違うかもしれないけれど、可能性を考えるとなんだか微笑ましかった。
おっとりと優しそうな和田先生に、色気たっぷりでちょっと気の強そうなシャーロット先生はなんだか不釣合いな気がしたが、
二人を取り巻く空気はとても穏やかで、お似合いだ。
お邪魔虫は退散するとしよう。
そう決め込んで、二人に頭を下げ今度こそ出て行こうとしたが、
「そう言えばシャーロット先生はフランスにも住んでいたことがありますよね」
「ええ、ほんの少しだけ。それがどうしたの?」
「ファム・ファタルの意味ってどういう意味ですか。フランス語ですよね」
前にも一度調べたけれど、もしかしてもっと深い意味があるのかもしれない。
僕が問いかけるとシャーロット先生は目をぱちぱち。
「あー…う~ん。男にとって
『運命の女』ってことかな。
赤い糸で結ばれた相手って意味でもあるのヨ」
運命の女―――
赤い糸



