「…え?僕?まこ……林先生じゃなくて?」
思わず聞き返すと、
「保健室の先生も目当てだけど、上の姉ちゃんは水月先生」
と中川は腕を組んだ。
「去年の文化祭で見て気に入ったんだと」と他人事のように言う。
「先生は彼女が居るのか、とか好きなタイプは?とか家でうるっせぇんだわ。あ、先生彼女居る?
現役女子大生とか好みじゃない?♪」
と中川はわくわくと聞いてくる。
「……彼女は…」と言いかけると、
「いねぇだろ」
と中川は決めて掛かってるし。
まぁ“昨日まで”は居たんだけどね!そこに……
僕はちらりと窓際の席を見て、雅の姿を視界の端に入れた。
「ってか何でそんなにはっきり言い切れるのさ。失礼な」
とちょっと怒ってみせるも、
「いるんかよ」と中川がさも『意外!』と言わんばかりに目を開いた。
「何で決めてかかるのさ!」
思わずムキになって言うと、
「だってぇ先生ってあんまり興味なさそうじゃん?居たら居たでいいかな~って感じに見える。
女子に絡まれても笑顔でかわしてるし」
「興味がない男なんて居るのかよ」
まさか以前僕がまこを好きだったことを見抜いてる?とドキドキした面持ちで中川を見ると、
「久米もそうゆうタイプだよな~。あいつも居たら居たでいいかなタイプだろうな」
中川が面白く無さそうに口を尖らせる。
でも、そこに深い意味はなさそうだった。
「俺さ、こないだ見ちゃったんだよね。久米がきれーな三年の女の先輩から告られてるの。
でもあいつ笑顔で断ってんの。
ちぇ。モテる男はこれだからイヤだよ」



