来客用のチケットと言うのは一人の生徒に対して5枚配布される。


日曜日の一般公開には、このチケットがないと文化祭の門をくぐることはできないのだ。


「来客用のチケットは一人五枚もあるだろ?どうしたんだ?」


僕が聞くと、


「全部中学んときのツレや、バイト仲間に渡した。一枚500円で」


「500円?売ったのかよ。ってか500円で売れるって凄いね」


商売上手だな。たかが高校の文化祭のチケットだろ?


ある意味感心したように言うと、


「みんな鬼頭狙いで来たいって♪商売繁盛~♪」


と言って中川は雅の方に目配せした。


は!?


びっくりして目をまばたくと、


「この辺じゃ結構…いや、かなり有名だから、あいつ。だから俺がチケット売った連中はみんな午後の喫茶店に来ること間違いなし☆」


中川は得意げになって胸を叩く。


「クラスメイトを売るような真似をするな」


僕が言ってやると、


「いいじゃん。先生真面目だな~」


良くない。雅を見世物にするなんて!と心の中で怒っていると、


「俺には金が入るし、クラスには票が入る。まさに一石二鳥♪配られたチケットをどう扱おうが俺の勝手でしょ?」と中川は軽い調子で笑う。


まぁ確かにそうだけど…


「分かったよ。で?何でもう一枚欲しいの」


呆れてため息をつくと、


「俺の姉ちゃんたちの分用意すんのすっかり忘れててさ~」


と中川は恥ずかしそうに頭に手を置いて笑った。


ああ、確か中川にはお姉さんが二人居たな。





「姉ちゃんたち、水月先生目当てなんだ。用意してないって知ったら俺殺されるかも」





中川は顔を青くして僕の手を握ってきた。