早めにホームルームを終えて、僕は出欠簿をチェックしていた。


生徒たちは次の授業がはじまるまで、思い思い過ごしている。


出欠簿をチェックするふりをして、さりげなく窓際の席をちらりと見る。


雅は―――…


相変わらず頬杖をついて窓の外を眺めていた。


あまり雅の方をじっと見つめていると、怪しまれそうだ。


僕は出欠簿に視線を戻すと、


『森本 エミナ』の欄に目を留めた。


さっき出欠を取ったばかの欄は出席の場所に、チェックが入っていた。


僕は雅から視線を森本に移すと、森本は周りの賑やかな雰囲気に迷惑そうに顔をしかめながら教科書を開いていた。


次の授業の予習でもしているのだろうか。


昨日の―――あの激昂して興奮していた感情は今はなりをひそめている。


「水月せーんせ♪」


ふいに肩に腕を回され、顔を上げるとクラスの生徒の中川(♂)がにやにや笑いを浮かべながら僕を覗き込んでいた。


「どうしたんだ?」


「俺、見ちゃったんだ~♪」


低く言って中川が口の端をにやりと吊り上げる。


見た……?一体何を?


まさか雅と一緒のところを………


ドキリとして唇を引き締めると、




「昨日、森本んちの前で姉妹ともめてたっしょ~♪」





と、中川は楽しそうに笑った。