ガラっ
扉が開いて、出欠簿を抱えた水月が姿を現した。
「おはよう。席についてー」
その声を聞いて、その姿を見て―――ドキリとした。
見てはいけないのに、つい視線が水月の姿を追ってしまう。
彼の姿が視界に入ると、ぼんやりと滲んで見えた。
自然に目に浮かんだ涙が視界を滲ませているのが分かって、あたしは慌てて手の甲で目をこすった。
水月はちょっと顔色が悪いのを除いたら、いつも通りだ。
ミイラになってたらどうしようかと思ったけれど、その心配はなかったみたい。
いつも通りスーツにノーネクタイ。いつまでクールビズしてんだよ、って突っ込みたくなるけど、
ってか実際男子生徒からは突っ込まれてるけど、
「暑がりだから」と言ってかわしている。
嘘ばっかり。
いつものように髪も無造作にセットしてあって、だけど
「先生~後ろ跳ねてるよ?寝癖♪」
と、今度は女生徒からの指摘が。
ホントだ。ちょっとぴょんって跳ねてる。
「可愛いー♪」
あたしも思ったもん。
水月は慌てて髪を押さえると、
「たまにはこうゆうこともある」と言って苦笑い。
「先生~首にキスマーク」
と男子生徒がからかうように言うと、さすがの水月もぎょっとしたけど、すぐに
「覚えがありマセン。また変なことだけ覚えて。山田は今日、日直」と言ってまたもさらりとかわす。
「え~」
山田は不服そうだったけれど、周りからは笑い声が。
女生徒に人気があるから男子生徒のやっかみが強いかと思いきや、水月は男子生徒からも好かれている。
何て言うか、やっぱ天然だからか??
いじり甲斐があるって言うか、先生って言うより近所のお兄さんみたい。



