「あ、鬼頭さん、おはよ~♪」
岩田さんが声を掛けてきて、
「あ、おはよ」と顔を上げると、岩田さんは一瞬驚いたように久米をちらりと見た。
「珍しい組み合わせだね。久米くん、おはよ」
「おはよう」
久米は爽やかに返している。
王子スマイルだな。岩田さんは確か久米を狙ってるはずだった……
ってことは、この状況あんまり良くないよね。
あたしは久米に
「じゃ」と軽く手を挙げて席を立った。
と言っても隣の席だから大して状況が変わるわけでもないけど。
しかも目の前には梶も居る。梶は一瞬だけ振り向くと、眉間に皺を寄せふいと顔を背ける。
状況…悪化してんじゃない?
後ろの席の乃亜は―――もうすぐ予鈴が鳴ると言う時間なのに、まだ来てない。
どうしたんだろう。
さっき家の前で会ったけど、何かあったんじゃ―――…
それか、乃亜のことも酷いやり方で遠ざけたから、今日は学校に来たくないって思ったかも。
そう思ったけど、予鈴が鳴るぎりぎりの時間に俯きながら教室に入ってきたのを見て、
ちょっとほっとした。
「梶くん、おはよう…」
「…あ、おはよ……」
梶と乃亜はぎくしゃくしながらも挨拶をして、
それでも、あたしを見ると乃亜はバツが悪そうに視線を逸らし、一言も喋らずに大人しく席についた。



