あたしは久米の母親に会った事ないけど、
でも
久米に似てきっと美人に違いない。
久米の両親は離婚したって噂を聞いた。
実家のクリニックはお父さんが経営していて、一緒に住んでるっぽい口ぶりだった。
久米のお母さんに会う機会はないかも、だけど
もし会えたなら、一言謝りたい。
「とーやの将来を奪って、ごめんなさい」
って。
実際のところ、まだ分かんないだけど。
でも85%の確率で、久米は“美術バカ”だ。
「鬼頭さんのアドレスとナンバーは鬼頭さんのケータイから赤外線で送って?」
と、あたしの手の上からケータイを握った。
大きな、でも男にしては細くてきれいな指があたしの手を包む。
「鬼頭さん手ちっちゃいね」
と、さりげなく言ってにこっと笑う。
さりげなく……
「また、触ってんじゃないよ」
バッ
あたしは久米から手を離すと、「分からないから勝手にやって」とケータイを突き出した。
この久米が……
あの美術バカ??
中学の頃は―――こんな大胆なことするヤツじゃなかった。
65%の確率に下がった。
別人か、
それとも
―――変ったのか。
中学のときから手も大きくなって、骨ばってるし。
でも何となく……感触が似ていた気がした。
「一人で大きくなってんじゃないよ」
ぼそっと呟いたけれど、久米はあたしの独り言に気付いていないようだった。
87%にアップだ。
とーやのばぁか。



