久米が一瞬だけ悲しそうに目を伏せたけれど、あたしは敢えて見なかったフリをした。
「家族旅行?どこ行ったの?」
「USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)」
「ああ、ユニバはセサミが有名(?)だもんね。でも何で敢えてこれを選ぶかな」
あたしは蛍光黄緑をしたエルモをちょっと指で弾くと、
「色に一目ぼれしたんだ。好きな色じゃなかったけど、ここまで鮮やかな蛍光グリーンをここに使う?って感じでしょーげきを受けた」
久米は、思い出を懐かしむように目を細めた。
あたしもこの顔色悪いエルモにはしょーげきだよ。
「ふぅん、羨ましいかも。あたし家族揃って旅行なんて行ったことない」
多忙だった両親のスケジュールが合わず、あたしはどこかへ連れて行ってもらった記憶があまりない。
でもいいの。
水月がたくさん連れて行ってくれたから。
少し前に県外の航空博物館までドライブした。遊園地とかガラじゃないし。
変ってるってよく言われるケド、こうゆうのを見るのが好き。
大きなパラボラアンテナのオブジェを見つけて、
「水月、見て!大きなパラボラアンテナ!」とわくわくと指差すと、
「近づかないほうがいいよ。あのアンテナは宇宙人と交信してるんだ。宇宙人に連れ去られちゃうよ」
と水月は意地悪そうに笑った。
「地球外生命体調査されてるって噂?このアンテナの周波数は約300MHzから300KHz。 波長は10kmが限界。宇宙まで届かないよ」
と言い返すと、水月は
「あ、はい」と目を点。「宇宙人もきっと雅を避けていくだろうな」と呟いてるし。
「もし連れ去られたとしても、必ず反撃に出て宇宙人を地球に持ち帰る。それで、水月へのお土産にするよ」
「いや、いらない。何なの、そのいじめは」
と水月はきっぱりと否定。
「じゃ、ゆずへの貢物にする」
「あの子に変なの与えないでください」
と水月は呆れ顔だった。
それすらも―――今は楽しい想い出。



