近くに転がっている久米のスマホには蛍光緑色をしたセサミストリートのエルモのぬいぐるみのストラップがぶら下がっていた。


こないだ見たときは一瞬だったし、気付かなかったけれど。


「何これ、顔色悪いエルモ。キモ」あたしはわざとらしく久米から手を離してそのエルモを手に取った。


「顔色悪いってね…」


久米もいつもの調子に戻って呆れたようにエルモのストラップに触れて、


「どこかに忘れちゃうことが多いからさ。こうして目立つストラップ付けておけば置き忘れることもないかな、って思って」


「ああ、あんた昔から忘れ物番長だったね」


軽く笑うと、久米は一瞬だけ切なそうに瞳を伏せた。


「昔からって、鬼頭さん俺の昔を知ってるの?」


そう聞かれて、あたしは目を細めた。


「さあね。知ってるかもしれないし、知らないかも。そこんとこよく分かんない」


久米を真正面から見据えてエルモを手にとる。あたしの手の平に収まるエルモはふわふわしててさわり心地が良かった。


「キモって言ったけど嘘だよ。このエルモは顔色悪いけど、エルモ自体結構好きだし」


久米はあたしの言葉に頬を緩めて口に微笑みを浮かべた。





「これ、最後に家族そろって家族旅行に行ったときに買ったものなんだ」