□Chairs.10
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「さよなら、先生。楽しかったよ」
別れは唐突にやってきた。
それは僕が予想も付かなかったタイミングと場所で前触れもなく。
別れは想像したよりも随分あっけなく、一方的に告げられた。
僕は彼女に何か声を掛ける暇もなく―――ただ立ち去っていく彼女の後ろ姿をぼんやりと見送ることしかできなかった。
―――…雅…
待って…
待ってくれ!
もしかして何か声を掛けたのかもしれない。だけど彼女は一度も振り向かず出口の向こうへ消え、
―――僕の声は届かなかった。
呆然としていたのは僕だけではなく、すぐ近くで目を開いたままの梶田、そして忌々しそうに雅が消えていった入り口を睨むまこが居て、
別れは夢や幻ではなく、
現実であることを―――思い知らされた。