あたしは水月を睨みあげると、彼の喉元めがけて手を伸ばした。


水月が一瞬で固まるのを見て、あたしは無表情に…その男性にしては細い首に僅かに力を入れる。


指の腹で水月の命が脈打っている。それはだんだんと早まり、彼が緊張を帯びているのが分かった。



あたしは知っている。


水月は首が弱いってことを。ここを絞めると、彼は―――落ちる。





「おい!何してんだよ!!」


保健医が怒鳴ってあたしの手を掴んできたけど、あたしはそれを振り払うように大声を上げた。


「あたしに触らないで!!」


あたしが怒鳴り声を上げると、一同はびっくりしたように体をびくりと強張らせ、保健医は怯んだように手を引っ込めた。






「愛してるって何?



あたしを守るって何から?」






あたしが挑発するように笑いかけると、水月が唇を引き結ぶ。


まるであたしじゃない生き物を見るような目つきであたしを見下ろしながら、ごくりと喉を鳴らす。


「ここを…」


あたしは水月の左右の頚動脈の位置を指で僅かに圧迫した。


水月が目を開いてあたしを凝視する。


「この二本の頚動脈を圧迫するだけで、脳への血流が断たれて数秒で人は死ぬ。ポイントは絞める位置だけ。


力は関係ない」


「何言ってんだよ、鬼頭……」


梶が顔を青くさせて、ちょっとだけ身を後退させる。



あたしの中に何か違う化け物でも見たのだろうか―――


その表情は今まで見せてきたどの表情とも当てはまらない。“恐怖”と言う名の感情が彼を支配していた。