「どういう―――意味……」
水月が戸惑ったように聞いてきてゆっくりと立ち上がった。
「“ご迷惑をお掛けしました”なんて保護者面しないでよ。あたしを愛してるってのは生徒だからって意味でしょ?」
「いや、違うよ!」
「今はそんなこと言ってる場合かよ。てかあの場でお前が彼女だって言えるか。こいつだって立場があるんだから」
保健医もちょっと怒ったように声を低める。
「立場?大人って面倒だね。あたしは“子供”だからこそこそするのとかもうイヤなの。堂々としていられない関係にもううんざり」
わざと挑発するように言って二人を見上げると、二人は困惑したように顔を合わせた。
状況に一人ついていけないのか、梶がおたおたとあたしたちを見比べている。
ザー…
雨の音が強まって、それに連動するかのように忘れかけていた下腹部の痛みがじわりじわりとよみがえってきた。
「最後まで言わせないで。大人なら分かるでしょう?
疲れたの。先生と生徒って装ってる関係が」
そっけなく言って顔を逸らすと、あたし以外誰もが時を止めたように息を呑んで固まった。
あたしが歩き始めると、
「それは神代と別れるってことかよ!?」
と梶が弾かれたように立ち上がり、あたしの肩を後ろから掴んだ。
「離してよ。あんたって意外とバカじゃなかったんだね。そうだよ、そういうこと」
あたしは梶の手を乱暴に払って、
「ついでに言うとあんたにも、もううんざり。ちっとも役に立たないし。今まで何か利用できるかと思ってツルんでたけど、
それすらもできないなら邪魔なだけ」
梶を睨むように言うと、梶は怒り出すどころか驚きすぎて声も出せずにただ固まった。
「おい!どうしたって言うんだよ、そんな言い方ねぇだろ」
今度は保健医があたしの肩を掴み、強引に前を向かせる。
あたしはその乱暴な仕草にちょっと本気で顔をしかめながら、
「あんたもウザい。いつもいつもあたしの邪魔ばかりして。
目障りなの。消えて―――」
保健医を睨んであたしは今度こそ乱暴に手を払った。



