保険屋との話は十分足らずで終わった。
保険屋がドライバーを引き連れて帰っていくと、水月が少し疲れたようにあたしを振り返った。
いつもの無表情―――…あたし、つくれてるかな…
本心を悟られないように口元を引き締めていると、水月はあたしの気持ちを探る気はないのか、
力が抜けたようにしゃがみこんだ。
「おい、大丈夫かよ」
保健医が心配そうに水月の肩に手を置き、
「ああ…うん。ごめん、気が抜けて…」
曖昧に微苦笑をもらし、そのままの姿勢で膝をつくとあたしの手をそっと握ってきた。
「―――良かった。
君が無事で―――良かった」
最後の方は声が震えていた。
あたしの手を握る手も、いつも優しいのに今日はまるで存在を確かめるかのように力強い。
「良かった」
水月はもう一度囁いて、うっすらと涙をためた色素の薄い目であたしを見上げてきた。
「生きていてくれて、良かった」
水月があたしの頬に手を伸ばし、そっと包み込む。
水月―――……
涙が出そうだった。
こんなにもあたしを―――大切にしてくれてる。
水月の手はこんなにも安心する。
こんなにも……
あたしは水月を愛してる。
だから「さよなら」するの。
今度こそ、本当に―――



