目を開けて状況を確認するようにゆっくりと視線を巡らせる。
あたしは道路のアスファルトに座り込み、引っ張った拍子に体勢を崩して地面に転んだのか、
尻餅をついている梶の体を後ろから抱きかかえていた。
道路を走っていたワゴン車は1m程手前で急ハンドルを切ったのか、ガードレールに派手にぶつかり助手席部分がぐしゃりと潰れている。
寸でのところでワゴン車はあたしたちを避け、ガードレールに衝突して止まったようだ。
ドキンドキン…
梶の胸元に這わした手から梶の心臓の音が伝わってくる。
すぐ近くであたしの手首からも同じ速さでリズムを打っていた。
「か、梶…大丈夫…?」
何とか聞くと、
「…あ、ああ。鬼頭は…?」
とワゴン車の方を呆然と向いたまま、弱々しく答える。
ズキリと膝に痛みが走って顔をしかめ、なんとなくそこに触れるとぬるりと嫌な感触がした。
手のひらを見ると、赤い血がべっとりと付着していてあたしは目を開いた。
「…鬼頭…怪我してる…」
梶がゆっくりと起き上がりながらあたしの手を掴む。
「アスファルトですりむいただけだよ。切ったりしてないし大丈夫」
「鬼頭さん!」
久米が人の波を掻き分けながら、あたしたちの元に走り寄ってきた。



