「冬夜兄ちゃんが……?」
信じられない、と言う感じで真愛ちゃんが口元を手で覆う。
「……ごめん、こんなこと聞きたくないよね」
僕は居心地悪そうに謝ると、真愛ちゃんは僅かに首を横に振った。
「どうしてそんなこと……」
一応は僕の話を聞いてくれる姿勢だ。その話を聞いて判断するのかもしれない。
彼女がどう判断するのかは分からなかったが、ありのままを言うしかない。
僕は学校の階段の踊り場であったことを簡単に説明した。
もちろん彼の首を固めて、締めたことは黙っていたが―――
隣でまこはじっと黙って僕の話を聞いていた。
僕が和田先生に雅との関係を吐露したときと全く同じ―――状況だった。
秘密が―――
少しずつ漏れていくような気がした。
それは僕たちを破滅に導くべき行為だった。
少しでも間違えれば、僕たちは永遠に決裂してしまうだろう。
でも雅の身には代えられない。
彼女が傷を負うことを考えたら―――僕のこのちっぽけな“立場”なんてくれてやる。
幾らでも捨てられる。
僕は数学教師だ。目に見えないものは信じられないし(だからホラー映画も全然平気)、見た目に寄らず現実主義者だとよく言われたりもする。
でも神さまがもし存在するのなら―――
神様。
お願いします
僕はどんなことも引き受ける。
だからどうか、雅を守ってください―――



