「何でそんなこと聞くんですか。


先生たちは冬夜兄ちゃんが何をしようとしてるのか本当は知ってるんですか?」


頭の回転が速い子だと思った。中学生だと言うことでこちらもずけずけと聞いてしまった。


すべてを疑っているわけではないが、ちょっとでも不審と思う点には気を緩めない。


こちらも手の内を見せていないから、警戒されるのは分かるけど。


どこまで喋っていいのか真愛ちゃんの中で考えが巡っているようだ。




まぁ真愛ちゃんにとって、僕は久米の担任と言うだけだ。それもまだほんの一ヶ月程。


夏休み前までは、僕たちはまるきり他人だったわけで―――



これ以上は聞けないか。


いや、この子はきっと僕たちが掴めていないことを何か知っている筈だ。


本人はそれほど重要だと思っていないことでも、僕たちには重大な意味を持つことを。


それを聞き出したい。


「こいつは冬夜兄ちゃんの担任だし、最近のあいつの様子が気になってるだけだよ。ちょっと落ち込んでたみたいだし」


と、まこがとってつけたように説明するも、真愛ちゃんは益々怪訝そうに眉をしかめた。


それだけのことで、こんな質問をするのがおかしい。




真愛ちゃんが警戒するように一歩身を後退させ、僕は慌てた。



こうなったら―――ちゃんと言うしかない。



今僕が掴んでいる事実を。真実を―――





「僕はこのスケッチブックに描かれた女の子を知ってる。



僕の教え子で、






恋人なんだ―――」