すっかりぬるくなった日本茶を頂きながら、考えをまとめるように目を伏せた。


まだ何か―――僕は掴みかねている。


どこまで探っても全体像はおぼろげで、霧がかっている。一歩先は崖かもしれない。


踏み出して転落しないよう、手探りで……いや、危険と分かっていて一歩も動けない状態だ。


どこか


どこか見落としているところはないのだろうか。


「あの…冬夜くんの使っていたお部屋はそのままに?」


ふと思いついて湯のみを置くと、僕はおずおずと聞いてみた。


「…ええ、そのままになってます。いつでも帰ってこれるようにって」


叔母さんが答えて、


「ご無礼なことと存じますが、一度見せていただいても宜しいでしょうか」


僕が聞くと、母娘は怪訝そうに顔を見合わせて、それでもすぐに


「普通の…部屋ですけど、どうぞ」


とおばあさんの方が答えてくれた。



僕とまこは久米の使っていた部屋へ案内された。


二階建ての家で、久米の部屋は二階の一番奥の部屋だった。その向かい側に久米の従兄妹の部屋(兄)そして、その隣に妹の部屋があるらしい。


こげ茶の落ち着いた扉を開くと、6畳程の洋室が広がっていた。


シングルベッドが一つ壁際に置かれ、その向かい側にパソコン机があったがパソコンはない。


「冬夜くんはパソコンを?」


一応聞いてみると、


「ええ、ノートパソコンを持っていました。いつかの学力テストで全国的にも上位に入った褒美と言うことで、妹が…」


叔母さんが答えてくれて、


「でもそのパソコンは冬夜が久米の家に持っていきました」とすぐにおばあさんが被せてきた。


「別にきょう日の高校生が自分のパソコンを持つことは珍しくないんじゃないか?」とまこが腕を組む。


それもそうだが……


何となく、机の上でぽっかりと空いた空間が気になったのだ。