「確率論の話は終わりにしよう。久米が犯人じゃないとすると、この手紙は犯人が入れたことになるだろ?


そうなると犯人は学校の内部に居るってことか?」


明良兄が視線を険しくさせて、手紙を手に取った。





「犯人じゃない。



けど




犯人側の“協力者”だ」





あたしの言葉に二人が息を呑む気配があった。


「……協力者…」


まさかそんな人物が存在するとは思ってなかったのだろうか、梶が信じられないものを見るような目つきでゆっくりとまばたきをした。


あたしだって今の今まで―――この手紙を見るまでは、そんな存在を知らなかった。


あたしは明良兄から手紙を取り上げると、隣の席の梶を間近で覗き込んだ。


梶がちょっと驚いたように目を開き、顎を引く。


「考えてみてよ。あたしたちの下駄箱に名前なんて入ってない。ラベルは貼られてるけど、出席番号だけ。それも男子と女子が別れてるからその数字に規則性はない」


「…まぁ確かに、それだったら雅がどこの下駄箱を使ってるのかなんて分かりはしないよな。


だけどそれだって犯人が学校の関係者だったら知ることもできるんじゃないか?」


戸惑ったままの梶の代わりに明良兄が口を開いた。


「思い出してみてよ。数日前に、学校の近くで不審者が発見されたこと」


「…そう言えば…女子をじろじろ見てたとか…先生たちが警戒してたよな」


と梶が思い出したように顎に手を置く。


「それだったら右門 篤史じゃないのか?」と明良兄。


「調べたけど、右門 篤史の勤務態度に不審な点はない。あの時間帯は工場もまだ稼動している時間帯だし、あいつが抜け出した可能性は低い」


「ってことは、その不審者がやっぱりストーカー……」


梶が顔を強張らせて、


「そしてそいつの協力者が学校内に居る」


あたしは一段と声を低めて、大きく頷いた。