「ここで整理しよう」


あたしは梶の買ってくれたミルクティーの紙のカップに口を付け、手紙を見下ろした。


「整理?」


明良兄が訝しそうに眉をしかめる。


「そうだよ。この手紙を見て気付いた。


何であたしの行動を把握してたのか、何故あたしの靴箱に手紙を入れることができたのか、何であたしのメアドを知り得たのか―――


分かった気がする」


「だってストーカーだろ?お前の行動を監視してれば」


と梶が目をぱちぱちさせる。


「他人を四六時中監視するなんて不可能だよ。特に学校へ入っちゃえば、学生や先生以外接触することなんてできない」


「それは久米ってヤツが犯人だからじゃないのか?それだったら辻褄が合うぜ?」


明良兄が声を低めて、ちらりと向かい側のカフェに目を向け、だけど異変がないことを確認できるとすぐに顔を戻した。





「久米はストーカー犯人じゃない」





あたしが二人を見据えると、二人は同じタイミングで顔を合わせた。


「どうして言い切れるんだよ…」と梶が不服そうに眉間に皺を寄せる。


「犯人ぽいヤツからの手紙が入ってたからか?そいつの自作自演かもしれねぇじゃん」


「あいつはこんな回りくどいことしないよ。だってあたしがあいつの下駄箱を見る確率なんて50%以下だよ。さらには手紙の内容を見る可能性は20%以下」


「まぁ確かに何となく気になって…って感じだったよな。置き方もすぐ分かるようにって感じじゃなかったし」


そのときの状況を思い出すように、梶がむーと唸りながら腕を組んだ。


「アポロニウスの定理であたしの気を引きつけるようなヤツが、こんな低確率の仕掛けをするとは思えない」


あたしが言い切ると、二人とも頭に『?』マークを浮かべたように首を捻った。