「おい、幾らなんでも久米のものだからって…他人の手紙をいいのか?」


梶が少しだけ顔を歪めて、でも気になるようであたしの手の先を見つめている。


サクサクサク…


手紙の端が切れる音を聞きながら、あたしは口を開いた。


「この手紙、前にも見たことある。二年前、美術バカが手にしてた手紙だよ」


「「―――…え……?」」


梶と明良兄が二人揃って顔を上げ、それから二人とも顔を見合わせた。


「ってことはあいつはやっぱり二年前同じクラスメートだった?」


明良兄が声を潜めてその手紙を見つめる。


「分かんない。ただ記憶にあるだけだし」


中を開封すると、一枚のそっけないコピー用紙がでてきた。


三つ折りにしてある用紙を広げると、例の如く新聞や雑誌の文字を切り取った文章が視界に飛び込んできた。





“コレデ雅ハ僕ノモノダ オ前ニハ渡サナイ


彼女ノ前カラ消エロ



消エロ!”




悪意の篭った一文にあたしたちは揃って口を噤んだ。


「脅迫文!?」


梶が声を落としながらも慌ててあたしを覗き込み、あたしは目を細めた。



梶の言った通り―――これは脅迫文だ。


「“これで”雅は僕のものだ」


あたしは手紙の内容を小声で復唱して、


この手紙の送り主が、今回はじめて手紙を送ったわけでないこと、度々久米にこのような手紙を送っていたことに―――確信が持てた。


そしてこの送り主は今日あたしに何かを仕掛けてくる。





生憎だけど、あたしはあんたの言う通りにはならないよ。




ストーカー野郎。