■Chairs.7



◇◇◇◇◇◇◇◇



『またね、水月』


彼の手を離したとき―――……彼の体温が遠ざかったとき―――


あたしは最後の覚悟をしたのかもしれない。


もうとっくに覚悟なんてできてたけど、簡単に死ぬつもりもないし、ストーカー野郎のいいなりになんてならないつもりだったけれど、


あの瞬間―――嫌な何かを感じて、あたしはそれを受け入れる心積もりをした。



映画『シックス・センス』を思い出す。


あたしはホラーがあまり好きじゃないけど、水月が好きで一緒に観たんだ。


あのふわふわ甘い顔で、意外にホラー系の映画が大好きな水月。最初知ったときは意外すぎるほど驚いた。


だってあたしよりダメそうじゃん?


水月はたまに、見た目やイメージを見事に裏切ってくれることがある。


遊園地の絶叫系の乗り物が大好きだったり、案外虫とか平気で触れたり。


その反対で、保健医の方が案外そういうのダメだったりして、笑える。(あいつああ見えてビビりだったりする♪)


あのときも、


『一人で観るから寝ておいで』


と言われたけど、彼の好きなものをあたしも知りたいって想いで一緒に観た。あたしって単純?


そんな想いで、怖がりながらもいつも一緒に見ていたあたし。


シックスセンスとは―――『第六感』


少年“コール”の第六感は幽霊が見えてしまうという霊感だった。


あたしに霊感はないし、幽霊を見たわけじゃない。


だけど―――


もし霊感とは違う何か第六感が存在するのなら―――あの一瞬であたしは“予知”をしたのかもしれない。まばたきをした瞬間に、目の裏で見えた。





真っ赤に染まる―――



赤い手を―――