まこの質問に安藤母娘は顔を合わせ、二人とも同じタイミングでまばたきをした。


まずい質問だったか、少し焦った。


「あの……」言いかけると、




「ご存知ないです?二年前の―――」




叔母さんの方が探るように目を上げて僕たちを見てくる。


今更ながら僕たちの身分を怪しんでいるようではないが、どこまで話していいのか逡巡しているように思えた。


恐らく、彼女は僕たちが全て事情を知っている上で話を進めるつもりだったろうが、予想外の反応に、ここではじめて警戒心を抱いたようだ。


ここで下手なことを言うと、安藤母娘は口を閉ざしてしまうかもしれない。


それどころか追い払われる可能性もある。





二年前




僕は久米の父親から聞いた話を必死に思い出していた。


まこが心配するようにちらりと僕を窺って、僕は眉を寄せた。


何だ?何が関係している―――…


久米両親が離婚したのは二年前。久米の父親のクリニックが建てられたのも二年前。


僕が久米の父親と話した記憶を掘り起こした。


“二年前”と言うキーワードを必死に手繰り寄せる。




『二年前に―――嫌な出来事がありましてね。


それで妻とは、冬夜の教育方針について色々意見が食い違ってしまって』




久米の父親の言葉を思い出し、


何のタイミングか、久米の授業態度を思い出した。