「冬夜の叔母です。この度は遠い所をお越しくださいまして」


久米の叔母さんも、老婦人と同じようにおっとりと上品な物腰だった。


顔もどことなく似ている。


僕が学校共済組合の組合員である証明書を見せ、学校の教員であることを確認してもらうと、二人はさほどじっくりと見たわけでもないのに僕を信用してくれた。


「私どもが冬夜のことを心配していましたら、下の娘が学校のHPを見つけてくれて。


教員写真のページで拝見していたので。お顔は見知っておりました」


HP…ああ、そう言うことか。


学校の平和的な雰囲気を演じる意味で載せていた集合写真がこんなところで役立っていたとは。


叔母さんはちょっと安心したように微笑んで、でもすぐにまこの方を目配せして、


「そちらの方は―…」とちょっと警戒するような目つきで眺めていた。


「同僚です。と言ってもこちらは校医なのですが」


僕が紹介すると、まこは自分のクリニックの名刺を取り出し、彼女に手渡した。


「あらぁ。お医者さん…」と二人は珍しそうにまこを眺めた。


でもその視線に不快なものはなく、名刺を確認して安心したのか、まこの存在も快く受け入れてくれているようだった。


この感じからすると、亡くなった久米の母親もこんな感じなんだろう。


久米は―――やはり、あの父親似…か。


リビングに通されて、お茶やお茶菓子を出され、最初のうちは久米の学校生活などを話をし、そして久米がこの家でどのように暮らしていたかを聞いた。


久米がこの家で過ごしたのは、二年と言う短い期間だった。


従兄妹は、久米と同い年の男の子、そして二つ下の女の子。


難しい年頃だろうに、久米も叔母さんの子供たちも本当の兄弟のように仲が良かったみたいだ。


優しい叔母と祖母に仲の良い従兄妹たち。叔母さんの夫と言う人も久米を可愛がっていた。


だったら何故……久米がこの家を出て行ったのか、


そこが気になる。


「私たち、本当はあの子を養子に迎えるつもりでした」


楽しい生活の話をしてひと段落したころ、まるで区切りをつけるように叔母さんはちょっと真剣な顔で僕たちを真正面から見据えてきた。


「養子に?」


久米にとってそれは最善な環境とも言える。


「そもそも、久…冬夜くんは何故あなた方ご家族と住むことになったのでしょうか。


難しい年頃だと思いますし、母子二人でも暮らしていくことはできなくないと思いますが」


僕が気になっていたことをまこが聞いた。