HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




それは僕の中に働いた第六感なのだろうか。


嫌な予感が巡り、あのとき強引にでも引き止めて何をするのか聞くべきだったか。


いや、問いただしても彼女は僕に教えてくれないだろう。


彼女は一度決めたことを覆すことがない。その信念に向ってひたすらに突き進む。


だったら僕に出来ることは、彼女の知らないことを―――調べるだけのことだ。


職員室ではまこが帰り支度をしている最中で、僕を見つけると、


「ほら、何をぼやっとしてんだよ。早く行くぞ」と僕を急かす。


僕一人だけで良いって言ったのに、まこは僕に付き合ってくれる。


「ありがとう」


思わず笑顔を浮かべて、僕は慌てて口元を覆った。


さっきの雅のわがまま…きっと本気じゃないだろうけど、でも何とな~く彼女に悪い気がしたから。


「何やってんだよ」


まこが訝しそうに眉を吊り上げて、


「ううん!何でもない」慌てて首を振った。


ま、いっか。まこは女の子じゃないし。(それが一番イヤなの by雅)


僕たちは僕の車に乗り込んで、地図を広げた。(運転は当然僕)


久米の転校前の住所が書き記してある書類のコピーを片手に。


「隣の県だろ?ここからじゃ車で一時間ってとこか。そう目茶苦茶に遠い距離じゃねぇな」


まこが地図を覗き込んで目を細めた。


「電車通学できない距離でもないけど、確かに通学には不便だ」


「ま、行ってみようぜ」


まこの言葉に頷いて、僕は車を発車させた。


久米が母親と暮らしていたと言う家は、隣の県の端に位置している。


現在は久米の母親の姉―――久米からすると叔母夫婦とその子供たち。そして久米の祖母がそこに暮らしているらしい。


その亡くなった母親のお姉さんにはそちらに向うことをすでに話してある。


「久米くんの現在の担任ですが」と学校名と名前を名乗って、


「彼が今精神的に悩んでいるようなので、ちょっとご相談を」と持ちかけると、先方はあれこれ探ったりはこずに、


『ああ…冬夜、あの子まだ立ち直ってないのですか……』


とすぐに納得が言ったように答えて、『私も冬夜のことが心配でしたし、あの子連絡してこないからこちらとしてもどうしているのか気になっていましたので』


と、僕の訪問に快諾してくれた。