HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



まるで幼い子供が駄々をこねるようなその物言いにびっくりした。


何と言うか―――彼女にしては随分子供っぽい。


思わず笑い声を漏らすと、


「何よ。あたしだってそう思うことぐらいあるもん。って言うか水月意味のないところでも笑い過ぎだよ。


水月の笑顔はキラースマイルなんだから」


キラースマイルって……


僕より雅の方がもっとキザだった。恥ずかしくて顔も上げられない。


嬉しいんだけど。何だか妙に照れくさい。




「あたしの前だけで笑って。



あたしに微笑んで。あたしだけを―――見ていて」





雅がきゅっと僕の肩に両腕を回して引き寄せてくる。ヒプノティックプワゾンの甘い香りが、脳を刺激的に痺れさす。


それは香りなのか、それとも彼女の体温や感触からなのか―――


はじめて聞く雅の“わがままのせいなのか―――


それは“わがまま”にしてはあまりにも可愛くて、愛おしいものだった。


僕も彼女を抱きしめ返すと、


「それは無理。生徒は平等に可愛いから」


と、からかうように言った。


雅が一層強く僕を抱きしめ、「水月ってトキドキ意地悪」とつまらなさそうに唇を尖らせた。


そんな彼女を宥めるように背中を撫でると、ほっそりと華奢な背中が手のひらにそっと馴染んだ。





「生徒は平等に可愛いけど、恋人としては―――たった一人。



いつも君を見ている」





キザ……かな?





「キザ」雅がおかしそうに笑う。


「だね」僕も笑った。






「でも嬉しい。感動した」






ふふ。やっぱり言った。