でも、例えどんな高い壁であろうと、僕は乗り越えてみせるし、
どんな深い“謎”と言う森が彼女を隠しても、
僕は彼女を救い出してみせる。
こんなこと言ったらキザかな。
キザだな。まこに知られたら笑い飛ばされるに決まってる。
雅は―――
「感動した」
無表情にそう返してきそうだ。
僕は照れ隠しに雅に笑いかけた。
すると雅は両手を伸ばして、「みょ」と言って僕の両方をつねる。
「何するんだよ」
口の端が変な風に下って僕は小さく抗議した。てか、痛い。
雅が白い頬を僅かにピンク色に染めてぷいとそっぽを向く。
そっぽを向きたいのは僕の方だ。一体何がしたいのやら。
「笑っちゃだめ」
声が掠れて、言葉が消え入りそうになっていた。
「は?」
ああ…こんなときに不謹慎ってことかな。
「そうじゃなくて…」
言い辛そうに顔を戻して、僕の両頬を包み込む。その手のひらはふわりと温かかった。
「その笑顔を他の女に見せちゃイヤ。
他の女に笑いかけないで。
水月の笑顔はあたしのものだもん」



