HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



ホントにやる―――…?


何を?


それは楠や久米とは別々に帰ることに、何か関係しているのだろうか。


……僕はスーツのポケットからUSBの端にそっと触れた。


雅が持っていたあのUSB。あのメモリに一体何が入っていると言うのだろうか。


雅と梶田は僕の存在に気付かず…と言うか気にしている余裕がないと言った感じで足早にこの部屋を通り過ぎようとする。


僕は少し開けた扉の隙間から手だけを出すと、雅の腕を握った。


彼女が驚いて声を出す前に、僕は彼女を部屋に引きずり込んで口元を覆った。


ヒプノティックプワゾンの香りを間近に感じて、


彼女が振り返り、目を開いたのが分かった。


「……鬼頭!?」


一瞬の間だったので、梶田は雅がこの部屋に連れ去られた気配に気付いていないようで、慌てて廊下を振り返りながら雅を呼ぶ。


僕は彼女の口からゆっくりと手を離すと、


「大丈夫!ちょっと用を思い出したから、下駄箱で待ってて」


と、早口に言い僕に向き直った。


我ながら、大胆な行動に出たものだ、と思ったが後悔などはしていなかった。



今―――


彼女と話さなければ、永遠に話せない気がしたから。


大げさだな。少し過敏になってるかもしれない。




でも



こうして二人きりで会えて




良かった。