「しかし、それだけであいつが犯人じゃないって決め付けるのはどうかと思うが」
まこは一応は納得してくれたみたいだけど、顔にはやはり渋面を浮かべていた。
「裏を掻いてあいつはお前がそのことを見破るかもしれないと踏んだかもしれないぜ?」
「だとしたらどうして。犯人が右利きであると言うことを報せるメリットが彼にはない。
錯乱させるためにあるのなら、久米は僕をわざと挑発するはずがないさ」
「それはそうかもしれんが…」
「だけどこの件に無関係とは言えない。久米がこの手紙の持ち主じゃないにしろ、どこかで繋がっているのは確かなことだ」
僕は手紙をじっと見下ろした。
この手紙の犯人は僕のことを知っている。
でも僕は犯人の見当もつかない。
「とりあえずここで待っていても何も分からないままだ。先に久米を探ろう」
「探るってどうやって…下手に動いたら、久米の思うツボじゃないか?何て言ったってあいつはお前を脅してきてるんだからな」
まこの言葉は僕自身が身を持って理解していることだ。
だったら尚更―――
「教師と言う立場を利用して僕を脅してくるのなら、
その立場を逆手に取らせてもらう」
僕は手紙を握り、
「僕はまだ久米のことを知らない。
彼のことを探る」
僕が目を上げると、まこが唇を引き結んで僕を見てきた。



