数学準備室に移動して、中からきっちりと鍵を閉めると、僕とまこ、二人してその手紙を改めて覗き込んだ。
「手紙の宛名はパソコンで打ってある」
住所はもちろんだけど、僕の名前もきっちりと明記されていた。
僕の存在を向こうは知っているってことだ。
それどころか名指しで来る辺り、しっかりと狙いを定めていることが明らかだった。
切手欄には切手が貼ってあって、隣の県の消印が押されていたが、犯人が住んでいる場所がそこだとは言い切れない。
「当然犯人は指紋なんか残してないだろうな。ってか、どうしてお前が鬼頭の彼氏だって気付いたんだろう」
「確信はないんじゃないかな。傍目から見て、そうかもしれないって疑ってる段階じゃない?
確信してたらこんな回りくどい手紙で忠告するよりも一気に仕掛けてきそうだ」
「ストーカーするヤツの考えなんて、まともな俺らでは予想つかないぜ?」
まこが肩をすくめてため息をつく。そしてもう一度改めてその手紙を手に取ると、何かを探るように手紙を上から下へとじっと見つめていた。
「犯人はどうやら几帳面な性格じゃないらしい。切り抜きの端に糊が届かなくて角がちょっとめくれてる」
まこがそう言って、机に手紙を滑らせた。
確かに―――…気付かなかったけど。
「ってかまこが意外に几帳面だからだよ」
保健室の薬品棚にはいつもきっちりと決まった位置に薬品の瓶たちが並べられて、少しでも乱れていると直しているところをたまに目にする。
「意外にとは何だよ」まこは口を尖らせたが、
「久米って几帳面じゃなかった?」
と聞いてきた。
「さぁ」
この手紙を送りつけてきた犯人―――それが久米かも……
それは僕も考えたことだ。