「大丈夫?具合悪そうだけど」
久米が心配そうにあたしを覗き込んでくる。
「保健室行った方がいいかも」
もう一人の“あたし”も目の前で頷く。
―――コンナコト忘レテシマエ
またあの声があたしを支配する。
やめて
やめて、やめて、やめて――――!!!
「誰なの!!」
あたしは叫んだ。叫んで二人から逃げるように身を後退させた。
思い出せない。思い出せない!
思い出せないんだ。
「鬼頭さん、しっかりして!俺を見るんだ!!」
久米があたしの両肩を強く掴んだ。
ビクリとして肩を揺らすと、久米があの柔らかい目であたしに微笑みかけた。
「俺を見るんだ。
大丈夫、俺を見て」
もう一度囁かれて、あたしは久米に引き寄せられた。



