「あんたを一生教師として活躍できないように仕向けることは、容易いことなんだ。
俺のケータイに爆弾があるよ?
どうする?
黙ってたら、何事もなかったかのようにしてたら、俺たちが卒業のときにそのデータをあんたの目の前で削除してあげるよ」
どうする?
久米は選択権を与えたけれど、でも体育教師に選択の余地などない。
あたしを脅してきたときもそうだけど、こいつの言葉には迷いなんてない。いつもまっすぐに向ってくる言葉に一瞬でも怯まされたら、もう
負けだ―――
森本さんのケータイを奪おうとしていた体育教師は、力なくその手を下ろした。
「俺が大人しくしてればそれでいいのか?」
「ええ。大人しくしてれば何も問題ないですよ?
でも先生、これがはじめてじゃないですよね。
他の女生徒にもそうやって迫ってたんでしょう?単位を餌に、関係を強要してきた」
口調とは裏腹に久米はにっこり笑顔を浮かべていた。
そう―――だったの………?
「うまく行けば鬼頭さんと楠さんを同時に手に入れる作戦が、すべて水の泡ですね、センセー♪」
乃亜も?
知らなかったとは言え、サイテーな奴だな。
あたしは再び唇を噛み体育教師を睨むと、体育教師は慌てたように視線を逸らした。
その脳みそまで筋肉でできたデキの悪い頭に言い聞かせるようにしてあたしは言った。
「刑法224条、未成年者略取って言葉を知ってます?
未成年者に対するわいせつ行為をはたらいた場合、刑法で罰せられるんですよ。
刑務所暮らしか、それとも大人しく体育教師をしているか、
どっちがいいか、その出来の悪い頭で考えてみな」



